あなたの為の不用品回収 町田
人との出会いが楽しいならもちろん結構なことだが、人脈作りを目指しているならやめた方がいい。
そんなことに腐心するより、彼が今とり組んでいる仕事をもっとも内容豊かに達成することだけを追求すればいい。
そのプロセスで、日頃のネットワークとは関係なく、たくさんの仕事に役に立つ人々と出会うはずだからである。
結局、私たちは1つ1つの仕事を通じて、いつも自分の宣伝をしているようなものだ。
物書きがいい原稿を書けば、「私はこんな素晴らしい物書きですよ」と宣伝することになり、原稿依頼がふえるし、ヘボな原稿を書けば、「私はこんなに下手糞ですよ」と触れ回っていることになり、原稿依頼は来なくなる。
もちろん物書きに限らず、ラーメン屋がおいしいラーメンを提供し続ければ、口コミで客は店の前に列をなすし、まずければ店内は閑散としてしまう。
輸入商社が安くて魅力的な商品を卸し続ければ、小売店が次々と注文を寄越し、趣味の悪い、値段も高い商品しか仕入れなければ、そのオフィスの電話はジリンとも鳴らないことになる。
こうした仕事そのものの持つ吸引力を抜きにして、人脈、コネクションといっても始まらない。
逆にいえば、それさえきちんとしていれば、顧客や取引先は向こうから群がってきて、あっという間に強力な人脈ができるだろう。
高岡氏はS社を辞めて半年後に「ソフト製作会社」を始めた。
米国、英国時代に培った人脈からいくつもヘッドハンティングの声はかかったが、それには応じなかった。
彼の会社は、新しいオフィス用ソフトの時代を迎え、いま急成長しているようだが、まだ従業員が数人のころから彼の営業方針は「生意気な営業」だったという。
彼は絶えず注文主にこういい続けた。
「ソフト作りの手足の部分だけでなく、設計から任せて下さい、クライアントにも直接会わせて下さい」志高く、質高く、大手企業と組んでも5分に主張していく営業である。
その結果、わずか数人から始めた会社が、いま数10人になろうとしている。
人脈作りに汲々としなくても、取引先に生意気をいえるくらいにいい仕事をすれば、必ず成長していけるほどに企業社会は柔軟である。
それでは人脈が仕事に役立つことはないのかといえば、もちろんそんなことはない。
先に、居酒屋チェーン店のY氏の「自信たっぷりな見通しどおりになったかどうかは後で触れる」と書いたが、実のところかなりうまくいっているのである。
うまくいっている理由のもっとも大きなものは、Y氏がそれまで地元でPTA活動や少年野球チームのコーチなど、地域活動をやっているときに作った人間関係であった。
それらの知人が入れ替わり立ち替わり店に来てくれるので、店が賑わっているのだ。
その比率は34割にもなるという。
人脈作りを自己目的にするのは、ムダが多すぎるといってきたが、その人の人間性が、あるいはその人の仕事ぶりが築き上げてきた人脈は、やはり彼の仕事を大きく背後からバックアップしてくれるのである。
動物学の用語に「刷り込み」というのがある。
定義は次のようになる。
動物の生涯のある特定の時期に急速に行われる学習のこと。
一度成立した刷り込みの効果は持続性がきわめて高く、しかもやり直しがきかない。
たとえば雁などは孵化直後に出会ったものを自分の親と認識し、その特徴を学習し、実際に自分の親を無視する。
たいていの人は、生まれたばかりの雛が最初に見た「動くもの」を、親と思ってくっついて行く現象をイメージするだろうが、私は人間に関する別の時期の「もう1つの刷り込み」の方をいっそう重要に思っている。
「人が初めて職業生活についたとき教えこまれた仕事の流儀が、その人の職業人としての土台に刷り込まれてしまう」ということである。
私の場合、初めての職業は銀行員だが、この時はその流儀を身につけようという気持ちはほとんどなかったし、期間も短かったから、やはり編集者の流儀が「刷り込み」されたということになる。
私はそのことを意識することがよくある。
編集者にもさまざまなタイプがあるが、私はG書房で単行本(ベストセラーを狙うようなものではなく、いわば時事教養というジャンルの単行本)を作ってきたので、その流儀がすっかり身についてしまった。
同じ編集者でも、雑誌の編集者と単行本の編集者とは、目指すものも手法もかなり違う。
だから私は雑誌の単発のルポを書くのは苦手で、上手ではなかった。
最初のうちはそもそも雑誌の原稿としてどんなものが求められているかがよく分からなかった。
読者としてはいろいろな雑誌を読んできたのに、書き手になると分からないのだ。
やがて分かってきたことは、多くの場合、雑誌で求められる原稿は、編集長が決めたある刺激的(魅力的といってもいい)なタイトル、リード(記事の要約文)をきちんと実証するような中身のものである。
そうしたタイトルやリードはたいていの場合、事実を大なり小なりデフォルメしないと、実証できない。
その面白おかしさで雑誌は読者を獲得しているのである(多くの場合そのデフォルメは罪のないものだが、時々かなり犯罪的になることもある)。
ところが私か12年間手がけてきた単行本の世界では、雑誌のようにタイトルを実証するために事実をつまみ食いして並べ立てるのではなく、事実の上にきちんと主張が乗っていることを目指すのである。
私は身についているから、雑誌的に面白おかしい構図を実証するために取材し原稿を書く気になれなかった。
雑誌編集者の側からすれば、生真面目でつまらない原稿ということになる。
彼らから露骨にいわれたことはないが、そう思われているらしいことは時々感じられた。
書き手の中には私とは逆に、雑誌的な構図でないと書く気がしない人もいるようだ。
中にはどんなテーマでも、怪しげでいい加減だけれど面白おかしいルポに仕立て上げられる人もいる。
皮肉ではなく貴重な才能だと思うが、私にはできないことであり、そんな人の単行本は眉唾だった薄味で読めないという場合が多い。
「もう1つの刷り込み」について、よく知られた書き手を実例として挙げておくと、納得していただけるだろう。
みな精力的に仕事をしている人たちだが、彼らの現在の仕事が、彼らが最初に所属した職場の延長上にあることは、はっきりと分かるだろう。
H.Yなど、新聞記者の書く雑誌記事や単行本は、簡潔な情報ばかりが優先していてつまらない、という一般的評価は優に覆しているが、その作品からはどうしようもなく新聞記者の香りが漂ってくる。
フリーの物書きになった当初は雑誌で修業をする人が多いが、私は初期のころから主に単行本に力を注いでいた。
遅くにこの世界に入ったからということもあるが、単行本育ちだったからである。
そういう修業をしていないための自分の欠点を感じることも時々ある。
私がもう5、六歳若くこの世界に入っていたら、どこかの雑誌の編集部で取材記者から修業して、雑誌的な腕を磨いても面白かったろうとも思うが、36歳の半ばからでは、そういう修業をやっているゆとりはなかった。
Y食品から居酒屋の店主になったY氏に再びご登場いただく。
彼の店は過去2年間、売上げはかなりあったが、無駄な出費も多かったので、利益の蓄積はできていない。
そこでY氏は3年目から合理化を図り、利益を残していこうと考えている。
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